「親から子へ、大切な資産である軍用地をできるだけ有利な形で引き継ぎたい」。
そのように考える所有者様にとって、「生前贈与」は検討する価値のある選択肢です。
しかし、正しい知識なしに進めると、かえって高額な税金が発生したり、ご家族間のトラブルに発展したりするケースも少なくありません。
この記事では、2024年改正後の贈与税・相続税のルール(相続時精算課税制度の年110万円基礎控除、生前贈与加算の見直しなど)を踏まえ、軍用地の生前贈与で失敗しないための「具体的な手続きと費用」「最適な節税方法」「贈与前に家族で確認すべきこと」を専門家が徹底解説します。
- 軍用地贈与が相続税対策になる根本的な仕組み
- 暦年贈与と相続時精算課税制度の有利な選び方
- 贈与税の計算方法とそれ以外にかかる諸費用の総額
- 失敗しないための贈与手続き「5つのステップ」
- 贈与実行前に家族で必ず確認すべき「3つの注意点」
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軍用地の生前贈与が相続税対策になる理由
軍用地の生前贈与がなぜこれほどまでに「相続税対策」として注目されるのか、その核心的な理由からご説明します。
監修者:株式会社GOLD・KEI編集部軍用地の贈与では、評価方法と将来の収入移転を分けて考えることが重要です。
制度の効果と限界を理解した上で判断しましょう。
相続税評価額と実勢価格の差額を利用した節税の仕組み
軍用地の相続税対策における最大のポイントは、「相続税評価額」と市場での売買価格である「実勢価格」との間に大きな乖離がある点です。
相続税や贈与税を計算する際の基準となる「相続税評価額」は、多くの場合、固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける「倍率方式」で算出されます。
軍用地は、年間借地料に取引倍率を掛けて売買価格が決まることが多いため、相続税・贈与税の評価額と実勢価格に差が出るケースがあります。
ただし、差額の大きさは施設、地目、固定資産税評価額、評価倍率、取引倍率によって変わります。
生前贈与を検討する際は、贈与時点の相続税評価額、贈与後の値上がり可能性、地料収入の移転効果を合わせて確認することが基本です。
参考:国税庁「土地家屋の評価」、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
地料収入を早期に子世代へ移転できるメリット
もう一つの大きなメリットが、地料収入の移転効果です。
生前贈与によって軍用地の所有権が子や孫に移れば、それ以降の「年間地料」は子や孫の収入となります。


これは、親世代の金融資産が地料によってこれ以上増え続けるのを防ぐ効果があります。
何もしなければ毎年蓄積されていくはずだった地料収入が、早期に次の世代の資産形成に使われるため、結果的に将来の相続財産総額を抑制することにつながるのです。
いわば、「贈与時点の評価額」と「将来の地料収入の移転」を組み合わせて考えられる点が、軍用地の生前贈与を検討する理由です。
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暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選ぶべきか
生前贈与には大きく分けて「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つの制度があり、どちらを選択するかが非常に重要です。



2024年以降は、相続時精算課税制度にも年110万円の基礎控除が設けられました。
ただし、2,500万円の特別控除部分は相続時に精算される点を誤解しないことが重要です。
制度の基本的な違いを比較表で確認
まずは、両制度の基本的な違いを整理しましょう。
ご自身の状況や贈与したい財産の額によって、どちらが有利になるかは大きく異なります。
以下の比較表で、それぞれの特徴を把握してください。
| 項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税制度 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年間110万円 | 生涯で2,500万円 + 年間110万円 |
| 対象者(贈与者) | 制限なし | 贈与年の1月1日時点で60歳以上の親または祖父母 |
| 対象者(受贈者) | 制限なし | 贈与年の1月1日時点で18歳以上の子または孫 |
| 相続財産への加算 | 相続開始前7年以内の贈与が対象(延長4年間は総額100万円まで加算対象外) | 贈与時の価額から年110万円の基礎控除を差し引いた残額を加算 |
| メリット | 少額の贈与を長期間続ける場合に有利 | 高額な財産を一度に贈与する場合に有利 |
| デメリット | 高額な贈与には不向き。7年ルールあり | 一度選択すると暦年贈与に戻れない |
相続時精算課税制度の新設「年110万円基礎控除」の活用法
本記事で最もお伝えしたいのが、2024年1月1日からスタートした税制改正のポイントです。
これまで使い勝手が悪いとされてきた「相続時精算課税制度」に、年間110万円の基礎控除が新設されました。
これは、生涯の特別控除2,500万円とは「別枠」で、毎年110万円までなら贈与税がかからず、相続時の加算対象にもならない制度です。
例えば、評価額3,000万円の軍用地を贈与する場合、この制度を使えば(3,000万円 – 110万円 – 2,500万円)= 390万円分にのみ贈与税がかかります。
そして、この110万円部分は相続時に持ち戻す必要がありません。
高額な資産である軍用地の贈与では、贈与時点の税負担を抑える選択肢として検討できます。
生前贈与加算が7年に延長された暦年贈与の注意点
一方で、従来の「暦年贈与」には注意が必要です。
以前は、贈与者が亡くなる前「3年以内」の贈与が相続財産に持ち戻されるルールでしたが、税制改正によりこの期間が段階的に「7年以内」へと延長されました。
2026年時点ではまだ影響が限定的ですが、今後、暦年贈与を利用して相続税対策を行う場合は、より長期的かつ計画的に、そして何より「お元気なうち」からスタートする必要性が高まっています。
相続開始直前の駆け込み贈与では、節税効果が限定的になる可能性があります。
参考:国税庁「相続時精算課税制度のあらまし」、財務省「令和5年度税制改正」


軍用地の生前贈与にかかる費用と税金
生前贈与を実行するにあたり、具体的にどのような費用がかかるのかを把握しておくことは、資金計画の上で不可欠です。



費用は「税金」と「専門家報酬」の2本立て。
トータルコストを把握し、贈与計画に織り込んでおくことが重要です。
贈与税の計算シミュレーション
ここでは、相続税評価額が「3,000万円」の軍用地を、子1人に贈与するケースで考えてみましょう。
どちらの制度を選ぶかで、納税額が大きく変わることがわかります。
| 制度 | 計算式 | 贈与税額 |
|---|---|---|
| 暦年贈与(特例税率) | (3,000万円 – 110万円) × 45% – 265万円 | 1,035.5万円 |
| 相続時精算課税制度 | (3,000万円 – 110万円 – 2,500万円) × 20% | 78万円 |
※上記はあくまで単純計算の例です。
実際の税額は個別の状況により異なります。
このシミュレーションでは、贈与時点で納める贈与税は相続時精算課税制度の方が小さくなります。
ただし、相続時精算課税制度で贈与した財産は、年110万円の基礎控除後の金額が相続時に加算されます。
贈与時の税額だけで判断せず、将来の相続税まで含めて試算することが必要です。
贈与税以外に必要な諸費用の一覧
贈与税の他にも、不動産の名義変更に伴う「登録免許税」と「不動産取得税」が必要です。
これらの税金は、固定資産税評価額を基に計算されます。
- 登録免許税
法務局で所有権移転登記を行う際に課される税金です。
税率は「固定資産税評価額 × 2.0%」となります。
- 不動産取得税
不動産を取得した際に一度だけ課される都道府県税です。
土地の税率は本則4%ですが、令和9年3月31日までの取得については3%に軽減されています。
また、宅地や宅地評価土地に該当する場合は課税標準が2分の1になる特例がありますが、軍用地の地目や評価区分によって扱いが変わるため、都道府県税事務所への確認が必要です。
これらの諸費用も数十万円単位になることが多いため、事前に計算し、資金を準備しておくことが大切です。
専門家(税理士・司法書士)への報酬相場
軍用地の生前贈与は手続きが複雑なため、専門家のサポートが欠かせません。
その際に発生する報酬の相場も知っておきましょう。
一般的に、贈与税の申告を依頼する「税理士」と、所有権移転登記を依頼する「司法書士」への支払いが発生します。
- 税理士報酬(贈与税申告):10万円~20万円程度
- 司法書士報酬(所有権移転登記):5万円~10万円程度
これらの費用は、贈与する軍用地の評価額や手続きの複雑さによって変動します。
事前に複数の専門家から見積もりを取ることをお勧めします。
軍用地の生前贈与を失敗しないための5つのステップ
ここからは、実際に軍用地の生前贈与を進める際の具体的な手順を、5つのステップに分けて解説します。



ステップ5の「地主会への名義変更」は絶対に忘れないこと。
これを怠ると、せっかくの地料収入がストップしてしまいます。
軍用地の評価額を正確に把握する
まず最初に行うべきは、贈与対象となる軍用地の「評価額」を正確に把握することです。
毎年市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に記載されている評価額が一次的な目安となります。
ただし、より正確な贈与税・相続税の計算を行うためには、軍用地に詳しい税理士に相談し、路線価や倍率方式に基づいた「相続税評価額」を算出してもらうのが最も確実な方法です。
贈与契約書を作成する
口約束だけの贈与は、税務署から「名義預金」とみなされるリスクや、後々の親族間トラブルの原因となります。
必ず「誰が(贈与者)、誰に(受贈者)、何を、いつ贈与したか」を明確に記した「贈与契約書」を作成してください。
法的に有効な契約書を作成するためにも、司法書士や行政書士といった専門家に作成を依頼するのが安心です。
法務局で所有権移転登記を行う
贈与契約が成立したら、法務局で不動産の名義を贈与者から受贈者へ変更する「所有権移転登記」を申請します。


この手続きは司法書士の専門分野であり、一般の方がご自身で行うのは困難です。
登記済権利証(または登記識別情報)、贈与契約書、贈与者の印鑑証明書、受贈者の住民票など、多くの必要書類があるため、司法書士に一任するのがスムーズでしょう。
税務署へ贈与税の申告と納税を行う
贈与を受けた人(受贈者)は、贈与があった年の「翌年2月1日~3月15日」の間に、所轄の税務署へ贈与税の申告と納税を行わなければなりません。
特に「相続時精算課税制度」を選択する場合は、初年度に必ず届出書の提出が必要です。
申告漏れや計算ミスはペナルティの対象となるため、税理士に申告書の作成と提出を依頼することをお勧めします。
沖縄防衛局・地主会への名義変更を忘れない
軍用地特有の、そして最も重要な手続きです。
法務局での登記が完了しても、地料を支払う国(沖縄防衛局)や、地主との連絡調整を行う「地主会」へ所有者変更の届け出をしなければ、新しい所有者への地料支払いに支障が出る可能性があります。
手続きが遅れると、地料の振込先変更や支払い確認に時間がかかるリスクがあります。
登記完了後、速やかに「土地所有権移転通知書」などの必要書類を提出しましょう。


軍用地の贈与実行前に必ず確認すべき3つの注意点
手続きを進める前に、ご家族間で必ず確認し、合意しておくべき重要な注意点が存在します。



贈与は「法務・税務」と「家族の感情」の両輪で考えること。
手続きの前に、家族間のコミュニケーションを密に取るのが成功の秘訣です。
他の相続人との間で遺留分トラブルは起きないか
軍用地は価値の高い資産であるため、特定の子一人のみに贈与した場合、他の兄弟姉妹から不満が出る可能性があります。
法律では、配偶者、子、直系尊属など一定の相続人に「遺留分」という最低限の相続割合が保障されています。
生前贈与がこの遺留分を侵害していると、相続発生後に遺留分を持つ相続人から「遺留分侵害額請求」をされ、トラブルに発展するケースが少なくありません。
なお、兄弟姉妹には遺留分はありませんが、相続人間の感情的な対立が起きないとは限りません。
対策として、贈与を実行する前に必ず家族会議を開き、なぜその子に贈与するのかを説明し、全員の理解を得ておくことが重要です。


贈与後の軍用地返還リスクをどう考えるか
軍用地は「国が借りている土地」であり、将来的に返還される可能性がゼロではありません。
万が一、贈与した軍用地が返還された場合、相続税評価額を圧縮するという節税メリットが失われるだけでなく、資産価値そのものが大きく変動するリスクも伴います。
もちろん、返還されれば再開発による価値向上の可能性もありますが、不確実性は残ります。
所有する軍用地が所在する施設(嘉手納飛行場、普天間飛行場など)の返還計画の有無などを事前に確認し、将来のリスクも考慮に入れた上で贈与を判断しましょう。


親子で話し合っておくべきこと(贈与の目的と管理方針)
生前贈与は、単なる税金対策や手続きではありません。
「なぜ、今このタイミングであなたにこの土地を託すのか」という親の想いを、きちんと子に伝えることが大切です。
先祖から受け継いできた大切な土地であること、受け取った地料収入をどのように活用してほしいか、将来の管理をどう考えているかなど、「贈与の目的」と「管理方針」を親子でしっかりと話し合っておきましょう。
こうしたコミュニケーションが、円満な資産承継を実現し、家族の絆をより深めることにつながるのです。


軍用地の生前贈与に関するご相談は専門家へ
ここまでご覧いただいたように、軍用地の生前贈与は非常に効果的な相続対策である一方、2026年最新の税制への対応や、不動産登記、さらには軍用地特有の手続きなど、多くの専門知識が求められます。



最適な贈与プランは、ご家族の状況によって全く異なります。
オーダーメイドの対策を立てるためにも、まずは専門家にご相談ください。
特に、税制改正によって有利になった「相続時精算課税制度」を最大限に活用するには、ご家族の資産状況や将来の相続計画全体を見据えた総合的な判断が不可欠です。
ご自身の判断だけで進めてしまうと、思わぬ税負担や家族間のトラブルを招くことにもなりかねません。
大切な資産を、最も良い形で次の世代へ引き継ぐために、まずは沖縄の軍用地に精通した税理士や不動産コンサルタントといった専門家へ相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
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